
見慣れた街を歩いていると、
風景なんて何も見ないで歩いてしまう。
目に入るのは信号の色だけ。
青なら渡る。
赤なら止まる。
あとは、ぼーっと考え事でもしながら、
ただ歩いてる。
すれ違う人の顔を見ながら、
かわいい人だなあ、とか
派手な服だなあ、とか、
せいぜいそんなもん。
あ、新しい店ができたとか。
今日、信号待ちをしていたら、
二人組の外国人バックパッカーと一緒になった。
あれ。
何でもない、ただの交差点なのに、
その二人、めっちゃ楽しそう。
何でかなあ、と思って、
辺りを見回してみた。
何もない。
コンビニと車しか見えない。
もう一度。
今度はバックパッカーの気分になって、
辺りを見回してみた。
「ここは見知らぬ異国の街」と、
言い聞かせて目を閉じ、再び開く。
お!
すごい。
いきなり景色を新鮮に感じる。
思い出したのは、2年半前に旅した台湾。
台北の街角。
雑踏をかきわけ、ネオンの街を歩いた。
それこそ、群衆と店、車、ネオンしかない、
東京と変わらない風景だったけど。
歩いてるだけでワクワクした。
あれは、街の力だけじゃなかったんだな。
旅の力だけでもなかったんだな。
自分の目。
ちょっと好奇心のフィルターをかけてあげれば、
途端に、今立つ場所が、最高にワクワクできる土地になる。
よし!
思い立ったが吉日。
仕事場から自宅まで、
1時間15分たっぷりかけて、
歩いて帰った。
自分の住む街で、旅ができた。
旅ってこんなに簡単なんだな。
この目を少し変えるだけ。
自分の街で、旅をしよう。

