
西表島に病院はない。
あるのは診療所。
東部と西部にひとつずつ。
歯医者は一件あるけれど、
それ以外は、誰もがみーんな診療所のお世話になる。
内科も外科も、小児科も。
大きな病気も、小さなケガも。
みんなみーんな診療所。
その診療所の先生が、2年間の任期を終えて、
今日この島を去っていった。
診療所を訪れた人、訪れない人、それこそみんなに愛された、
ホントに素晴らしーい先生だった。
やさしくって、的確、迅速。
親しみやすいのに、先生としての一線は画する。
学ぶことを忘れぬ姿勢。
それだけじゃなく、地域のことにも協力的で。
三味線、エイサー、青年会。
老若男女、全ての人に愛されていた。
だから今日の見送りも盛大!
おそらく初めてじゃなかろうか。
朝の8時に部落放送。
「先生が今日、島を去られます。
見送りに行く方は、11時15分までに港にお集りください」
わたしも食堂を抜け出し、駆け付けた。
港には、子供からおじいおばあまで、総勢100人あまり。
今まで何人もこの島から送り出して来たけれど、
おばあがこんなに集まったのは初めて見た。
公民館長のあいさつに始まり、
幼稚園児の「先生、どうもありがとう!」
そして、祭りのときしか見られないはずの「獅子舞」までもが
登場!
笛に合わせて、おばあも踊る。
見送りに来たひとりひとりと、先生が握手。
泣かないつもりだったけど。
握手をしたら泣いちゃったー。
大切な人が倒れたとき、
からだの調子が悪いとき、
いつもそこには先生がいて。
年が近いこともあって、
先生であり、友達だった。
心強い存在だった。
船が遅れて、最後までは見送れなかったけれど。
(食堂なので、昼どきまでには戻らなくてはならなくて)
もう、この島にいないんだなあ。
先生、どうもありがとう。

