2003年12月 お祭り騒ぎのキト〜クエンカ

バカの足

マンゴーにバナナ。
さらにサトウキビ畑もあったりして。
沖縄を思い出す機会の多い、今日この頃。

ペルー料理に飽きてきたのもあって、
「そういえば、てびち(豚足)が食べたいなあ」
なんて、ぼんやり考えながら、
エクアドル第2の町「クエンカ」の市場を歩いていた。

すると何と!
そこに「てびち」発見!

しかも、売ってるだけじゃなくて、しっかり調理してある。
すぐさま、おばちゃんに
「これ食べたい。これ!」
と、指さすと。
皿いっぱいに、てびちのスープを出してくれた。

これがまた、香草たっぷりでおいしいんだ。
「エクアドル最高!」なんて、にやつきつつ、
スープをすすっていて、
ふと、おばちゃんに
「豚でしょ?豚、大好きー」って言ってみたら。

おばちゃん、豪快に笑いとばして、一言。
「牛だよ」

って、「えーっ、牛!?」
まみこ、びっくり。

しかもスペイン語で「牛」のこと、「バカ」って言うんだよねー。
おばちゃんに一言、
「バカ」と言われ、
「えーっ、バカ!?」と、驚くわたし。

この場合、それでも意味が通じてるからこわい。
「牛を食べて、豚でしょ?って喜ぶ日本人」に一言、
「バカ」。

それにしても、牛の足も、ゼラチン質。
コラーゲンたっぷりで、豚足そっくり。
おいしいよ。
日本でも出せばいいのに。

お祭り騒ぎのキト到着

毎日が「阪神優勝」。
そんな感じの「キト」にいます。

「キト」は、エクアドルの首都の街。
「キト」に着いて、早5日。
いよいよ明日、12月6日が、年に一度の「キト祭」

キトの街は、キト祭の本番を前に、
既に毎日大騒ぎ。
お祭り騒ぎとは、まさにこのことですな。

騒ぎ方は、みんな同じ。
とにかく「ブラスバンド(吹奏楽隊)」に、パレード、ダンス。

太鼓やトランペットに群がって、
街のあちこちで輪になって踊ってる。

ひとしきり踊り終わると、
そのまま演奏しつつ次の広場に向かうから、
まんまパレード。

移動の仕方は、行進だったり、トラックだったりする。
トラックの荷台に、
ブラスバンドも群がる人も、みんな乗り込み、
ぎゅうぎゅう詰めで移動しながら、
もちろん演奏。
そして踊る。

曲は、お決まりのやつがあるんだな。
もう、それしかないくらい、その曲ばっかり。
それでもやっぱりその曲が一番盛り上がる!

わたしもその曲、大好きになっちゃった。
一日中、口ずさんでます。
パララパッパララー、パララパッパララー。

そして、この「お祭り騒ぎ」、
日暮れと同時に、一気に盛り上がり始める。
昼間もちょこちょこ盛り上がってるけど。
真骨頂は、何しろ、夜。

19時頃から、0時頃まで、
ブラスバンドを乗せた車が、
何台も何台も、街中を走り、踊り、騒ぐ。

わたしももちろん、広場で踊る。

まだ友達もいなくって、
でも楽しくって、ひとりでキャーキャー踊ってたら。

そこはもちろん、目立っちゃうんだな、東洋人。

たちまち輪の中心に引っ張り出され、
陽気なおじさんと、くるくるダンス。

ポップコーンの吹雪を浴びて、
終わればワインも待っている。

あー、この騒ぎで、まだ本番前だなんて。
どうなっちゃうんだ、今夜と明日。

地球を二つに分ける線

キャーーーーー。
我ながら、予想以上に大興奮!

どこにいるって、赤道さ、赤道ーーー。

地球を、北と南の真っ二つに分ける線の上に
来ているのですー。

わかりやすく、オレンジの線(赤ではない)が引いてあるから、
大興奮中のまみぞうは、
線を右に左に、
いやいや南に北に、飛び跳ねて。

「はい、北半球!」
「はい、今、南半球!」
って、ぴょんぴょんやって、遊んでます。

すっごく楽しーい。

しかも、北半球に立った途端、
日本がものすごーく近づいた気がする。

たった数センチ、踏み出しただけなのにな。

おーい、日本!
まみこはここだー。

赤道の真実

あんなに、あんなに大はしゃぎしたのに。
何と、あの赤道は、ニセモノだった!
びっくり。

あんなに大きな記念碑が建っているのに。
あんなにみんなが写真を撮っているのに。
記念の郵便局やら、みやげもの屋で、
小さな町までできているのに。
その町の名は、まさに「Ciudad Mitad del Mundo」(赤道の町)なのに!

だけどニセモノとは、どういうこっちゃ。

「赤道の町」の外れの駐車場の、
さらに外れに、ひっそり小さな看板がある。

「水と卵の実験は、この先200メートル」

何だろうと思って歩いていくと、入り口があった。
入場料を2ドル払うと、そこには何と…
赤い線が!!

さっき、大はしゃぎして、ぴょんぴょんまたいだ「赤道」は
オレンジ色だったのに。
ここには何と「赤い線」が!

あまりにもひっそりとしていて、
こっちの方がニセモノと思いがちだけど。

だけど、ここでは実験ができた!

赤道を挟んで、北と南。
2つの磁力がぶつかるところ。

バスタブに水を貯め、一気に栓を抜くと…。
線の右側、南半球では右巻き。
線の左側、北半球では左巻きに渦が巻く。
(あれ、逆だっけ?)

そして何と、赤道の線上で栓を抜くと、
渦が巻かずに、まっすぐ水が落ちていく!!

間違いない。
ここが本物の赤道だ。
恐るべし、赤道!

さすが、その名も「Mitad del Mundo」
直訳すると「世界の半分」

この不器用なわたしでも、
赤道の線上では、
「生の卵を、細い釘の上に立てる」ことができました。

感動!
磁力、まさに地球の力を借りて、
この手が卵を立てました。
地球との共同作業を実感。

これぞ赤道。
思うに、「ニセモノの赤道」が、あんなに目立ちながらも
オレンジ色をしてるのは、
ペンキを塗った人の、ささやかな罪悪感だね、きっと。

12月6日の天使 1

キトに到着して1週間。
いよいよ、キト祭本番の朝を迎えた。

そしてこの日、わたしは8回目の注射。
(狂犬病のワクチンは、7回連続プラス、3回の再接種が必要)
エクアドルでは、初めての注射だ。

「注射が終わったら、パレードを見て、
踊りながら、闘牛場へ向かおう」なんて、
半分以上、祭りに心を奪われながら、
うきうきと病院へ足を運んだ。

すると、ここのお医者さん、はなからわたしの話を聞こうとしない。

いくら説明しても、
「下手なスペイン語を話す、厄介な患者」を
どうにか早く帰らせようと、全く的を射ない対応ばかり。

こんなこともあろうかと、
ペルーの保健所で書いてもらった紙
(犬に噛まれた日付や、ワクチンの種類などの説明書き)も、
読もうともしてくれないから、役に立たない。

でもわたしだって、注射を打たなきゃ、
狂犬病で死んじゃうかも知れない。
そう簡単には引き下がらずに頑張っていると、
ちょうどそこに、もうひとりのお医者さんが現れた。

助けを求めて、
何とか注射は打ってもらえたけど。
国が違うし、ワクチンの種類も違った。
ちょっぴり心配。
何より、心無いお医者さんとのやりとりに、心の力を消耗。

朝、来たときとは裏腹に、とても悲しい気持ちで病院を出た。

そのまま祭りに行く気にも、
かといって、宿に戻る気にもならず、
ふらふら町を歩いていると。

向こうから、陽気な3人の青年。

祭り当日だし、唄いながら歩いてる人なんて、
さほど珍しくもない。
気にも留めずに、すれ違おうとした、そのとき。

一瞬、何が起きたか、わからなかった。

ていうか、今でもよくわからない。
たぶん「体当たり」されたんだと思う。

突然、体全体に衝撃を受けて、
気づいたら、地面に転がってた。

見えたのは、笑いながら去っていく、3人の青年の後ろ姿。

よくわからないけど、悲しくて。
涙がたまってきたけど、そのまま泣くのも悔しくて。

顔を上げたら、高い高い教会が見えた。
何にも考えず、ただまっすぐ、教会へ歩いた。

教会の時計台から、キトの街を見下ろして。

「よし。今日、出よう」
心の底から、そう思った。

祭りは、もういい。
今日、出よう。

久しぶりに、神様の声が聞こえた気がした。

祈っていても、ただひたすらに
「ありがとう、ありがとう」と、それしか生まれてこなかった。

あんなにひたむきに祈れたのは、
7月に、長崎の浦上天主堂に行って以来。

すぐさま迷わず荷物をまとめ、
午前中のうちに宿を出た。

12月6日の天使 2

キト祭の当日。
「祭りはもういい。今日、出よう」
そう決めた1時間後には、
もうバスターミナルにいた。

ターミナルに到着すると、
次の地「リオバンバ」へ向かうバスは、10分後の出発。

タイミングの良さに、
「ああ、これでいいんだ」
と、胸を撫で下ろす。

バスがキトを離れるにつれ、
どんどん世界は、清々しく晴れていった。

そして到着した「リオバンバ」の町。

まずは、その町のカテドラル(中心教会)に挨拶をして、
夕暮れの空の下、のんびり広場を歩いていると。

一組の老夫婦に、声をかけられた。
「わたしたちの写真を撮ってくれない?」

にこやかなご夫婦の笑顔に、
「ええ、もちろん!」
と、笑顔で応え、写真を撮った。

ご主人の名前は「アンヘル」さん。
奥さんは「テレサ」さん。

とても優しい空気の二人と、
時間が止まったかのような、
幸せなひとときを過ごした。

名残惜しいながらも、別れ際。
「写真を送るから」と、
手帳に名前を書いてもらうと…。

びっくり。
何と、「アンヘル」は「Angel」。
「天使」という名が、そこにはあった。

「天使」との出会いに、ため息しか出ないわたし。.

奥さんが微笑む。
「そうよ、わたしの主人は天使なのよ」

ああ。
本当にありがとう。

わたしはこの日、天使と出会い、
天使の奥さんから、
この旅1番の、愛のこもったハグ(抱きしめ)をもらいました。

ありがとう。

列車の屋根から見る景色

列車の屋根に、昇ったことがありますか?

「リオバンバ」からは、週に3回、
朝の7時に列車が出る。

そこでは何と、走る列車の屋根に昇れる。
屋根の上に座って、足を投げ出し、
5時間半の列車の旅。

早朝の駅には、屋根の上に少しでもいい席を確保しようと、
6時前から乗客が集まる。

わたしももちろん、事前に情報を入手して、
「右側の屋根」に座ろうと、
眠い目をこすって、5時40分には駅に向かった。

出発までは、まだだいぶある。
屋根の上に座って、本を読んでいると。

来るわ来るわ、貸しザブトン屋。

そりゃあ、硬い屋根の上で、5時間以上も列車に揺られるのは、
お尻がきついよね。

みんな借りてた。

わたしは用意周到にも、
バッグにやわらかーい衣類とタオルだけ詰め込んできたから、
それでザブトン代わり。

コーヒー屋やら、パン屋やらが、
入れ替わり立ち代わり、屋根の上を歩いて売りに来る中、
いよいよ7時。
列車が動いた。

「のりもの」ってのは、あの、動き出す瞬間が、
最高にわくわくするよね。
まるで子供に帰ったかのよう、胸高鳴ったよ。

そして。

風を切って走る景色が、
ガラス越しじゃないって、気持ちいい。

沿道を走る子供に手を振りながら、
町なか、草原、崖っぷち。

列車の屋根に座ったまんま、
数々の景色を走り抜けた。

車掌さんまで、屋根の上。
ステキな列車が、リオバンバにはあります。

知らなくてもいいかな

日本を発って、約2ヶ月。
テレビも新聞も見ない(わからない)ので、
世の中のことを、何も知らずに暮らしてる。

この2ヶ月で、わたしの知った「日本のニュース」は、
「阪神タイガース、日本一ならず」と、
「夏川りみ、BEGIN、2年連続紅白出場」。
この二つのみ。

まあ、どちらも、わたしにとっては、
割と大きめのニュースなだけに、情報源は知人のメール。

「もっと重要な事件も起きているだろうなあ」
と思いつつ。
日々のインターネットも、
この日記の更新と、メールの返信でいっぱいいっぱい。
「まぁ、いっかー」と、ただ毎日を楽しむのみ。

そしたら最近、どうやら「サダムフセイン元イラク大統領」が、
みつかったっぽい気配あり。
(それくらいの鼻は利く)

「これは知らないとまずいだろう」
と、さすがにネットで調べたよ。

そしたら、一気に情報の嵐。

ネットって、すごいね。
地球の裏側にいても、
広末涼子が妊娠したことまでわかっちゃう。

「そうか、松井はダブルでニューヨークなのか…」と、
変な感心をしつつ、
クエンカの河辺を歩く夕暮れ。

クエンカにて

ただいま、ホームステイ中。

初めてのホームステイは、
イメージ通りの
「料理上手な、でっかいママ」と、
「子供に孫の大家族」。

毎日、ちびっこと追いかけっこしながら、
ママの手料理、食べてます。

居間で家族と、テレビを見ながら、
辞書を片手に、宿題してます。
(スペイン語学校にも行ってる)

土曜の午後には、家族みんなで車に乗り込み、
ショッピングセンターで、クリスマスの買い物。

日曜日には、ママと市場で買い物をして、
一緒にゴハンの仕度をします。

幸せすぎて、ぶくぶく太る。

「ホテルの鍵」じゃなくって、
「家の鍵」を持つって、あったかい。

嘘をついたのは誰だ。

今、わたしが住んでいる家には、
以前にも、日本人がホームステイしていたらしい。

「トモ・ヒロサト」を知っているか、と、
家族全員に1回ずつ聞かれた。

わたしとしては「トモヒロ・サトウ」だと思うんだけど。
みんな「トモ・ヒロサト」だと言って譲らない。
まあ、どっちでもいいや。

そして、その「トモ・ヒロサト」に
ひとつ言いたいことがある。

「頼むから、日本のことで、嘘をつくのはやめてくれー」

わたしは家族と「肉」を食べる度ごと、
「日本では、犬とネコを食べるんだってね」
と言われて、困ってます。

「食べないよー」と、何度言っても、
家族みんなは
「いやいや、トモ・ヒロサトが言っていた」
の一点張り。

わたしより、確実にスペイン語が達者な
「トモ・ヒロサト」の信用度はバツグン。

わたしが何度「犬とネコは食べないんだ」と言っても、
「やれやれ、どっちの言うことが正しいんでしょうね」
ってところが限界。

トモ・ヒロサトの説を覆すところまでは辿り着けない。

もう面倒だから、
そろそろ「犬とネコも、おいしいよー」
って、答えちゃおうかな。

なぜクエンカか

「クエンカ」が好きです。
大好きです。

どうしてこんなに、この町を好きになったのかなぁって、
ぽけーーっと、河辺で考えてた。

そしたらわかった。

たぶん、この「ぽけーーっと」が重要なんだ。

わたしは何も考えず、ぽけーーっとするのが大好きで。
でも、南米に来てからというもの、
宿の外では、常に緊張を強いられてきた。

いつどこで、引ったくりに遭うかわからない。
「首絞め強盗」に遭った話は、何度も聞いた。

そして、その感覚としては、
「ひったくる人が悪い」のではなく、
「ひったくられる人の油断」が悪いのだ。

だから、カバンは極力持たず、
持つときは決して背中にまわすことなく、
常に抱えて、常に周囲に気を配りつつ、歩いてた。

ところが、この町「クエンカ」は、
そういう空気がないのです。

他の町とは一味違う、
穏やかな気候、
人々のゆとり、
心おきなく「ぽけーーっと」できる治安の良さ。

町には、4つの河が流れ、
その周りを芝生の緑が囲んでる。
読書する人、洗濯する人。
常春の日差しが、町を包む。

気持ちのいいカフェもあれば、
活気にあふれた市場もある。

「ヨーロッパの田舎も、こんな感じかなぁ」
と、まだ見ぬ土地に、思いを馳せていると、
すぐ脇を、インディヘナのおばちゃんが通ったりして。

確かにここは、南米で。

こんなに優しいクエンカの地で、
クリスマスを迎える幸せ。
まさに「フェリスなナビダー」(幸福なクリスマス)だ。

スペイン語で「メリークリスマス」のことは
「フェリス ナビダー」と言います。