「まみぞう日記」-そのプロローグ。

『まみぞう、大いに惑う』(text by マングース)
生きることって、悩むことなのかな、ってたまに思う。
俺自身は運良く中学校時代に夢を見つけ、その実現の難しさに、恒例とも言えるほどの挫折を繰り返しながらここまで出版という仕事に関わり続けてきた。
それでも、1日1日、精神をついばむような悩みに遭遇しながら暮しているような気がする。
自分が一つの、ある意味「出版文化」を担っていることに特別なプレッシャーはない。
しかし。それは例えばお金の事だったり。社員との関わり合い方だったり。編集や営業といったそれぞれ抱えている仕事のことだったり。プライベートのことだったり。
それは驚くほどに即物的な悩みを抱え、そしてそれを解決していく日々。
そんな毎日に、自分の持つ夢が揺らいでしまうこともやむを得ないことなのかもしれない。
それこそ、だからこそ、初心が大切なのだろう。
自分は何の為に今この仕事をやっているのか。誰のために悩んでいるのか。それは常に、「初心」に答えはある。
常に自分の夢を口に出し、口にしたからにはそれを叶えていくために最大限の努力をしていく。
そして懸命にそこへ向かえば向かうほど、『壁』という名で悩みは常に大きく立ちはだかる。
そして…また初心へ帰る。その繰り返し。
無駄なことは何もなくて。いつかそれは、『成長』という名の大いなる成果を自分にもたらしていく。

でも…その『初心』が揺らいでしまったとき。
一体どうすればいいのだろう。

少し前から、このHP上にある『まみぞう新聞』。
これを書いているのは何者なのかを、あえて明らかにせずに今日までは来た。
そして今、リニューアルするこのコーナーにおいて、彼女のことを少し語りたい。

山口まみ子(麻美子)。1973年5月14日生まれ。27歳。独身。
彼女の特徴は、その笑顔。(写真参照)
どこにでもいそうな、ちょっとかわいい女の子にしか見えなかった。
しかし彼女はその人生において、常に惑い、行動し、そしてまた惑う。
彼女ほど、逃げ道を作らずにここまで『自分探し』に没頭している人間を、俺は見たことがない。

「楽しいことしかしない」
「自分のメシは自分で食う」

これは、98年3月。彼女がそれまで2年勤めていたおもちゃ会社を辞めるときに決めた、「今も変わらぬモットー」なのだそうだ。
それ以来、メキシコでピラミッドに登り、東北を一人旅し、ホノルル・マラソンを5時間で走破し。
昨年1月、彼女は 路上人 のりやすに出会う。
それからしばらく、彼女の「楽しいこと」はのりやすの路上を手伝うことだった。
半年後の夏、ところが突如、彼女は俺達の前から姿を消す。なんと木曾・御嶽山の地上3000メートルを越える山小屋でバイト。ずいぶん硬派なバイトをするもんだなー、と山を下りてきた彼女に尋ねたら、彼女のバイト遍歴が並みではなかった。
TVのエキストラ・交通量調査・テレホンオペレーター・カフェなど、まあ、ありそうなところから、のりやすの路上手伝い・地図調査(!)・もちつき(?)・前出の山小屋など…
もちろん、ここにその全てを記していたら、スペースはいくらあっても足りない。
そして今年の初め、沖縄の離島・由布島での4ヶ月に及ぶ住み込みで、バイト道ここに極まれり!という感じか。
そして8月17日。彼女は再び由布島へ旅立つこととなる。ただその「初心」をつかむために。

このコーナーでは、そんな彼女・まみぞうの「揺らぐ」毎日を、その8月17日をスタート地点に、日記形式で綴ってゆくものである。
彼女からは毎日、俺宛に葉書が届き、俺はただ何も手を加えずにそれをここにアップしていく。 ただ、それだけのコーナーだ。
だが、そこには自分を探すために、自分をつかむために、もがく一人の人間の感情が存在している。
夢があろうが、夢がなかろうが。自分らしく生きるために行動を起こしている人間の姿がそこにはある。
その「初心」をつかむために。感じるために。
年齢・性別は関係ない。ただ、行動できるか否か。人生は、ただ一度きりだ。

彼女は沖縄へ旅立つ前、俺に「自分の本を出したい」と言った。
俺も、彼女の本を出したいと思った。
だが、それが現実のものとなるかは、全て彼女自身のこれからによる。
この日記を通じて、彼女が成長してゆく姿を、読者の皆さんと共に見守りたい。もがく姿を。あがく姿を。
その感情に、一切の妥協はない。

以下、彼女が旅立つ前日、俺に寄せた決意表明。

『行ってきます。』
沖縄本島から、さらに南へ400キロ!
西表島のおまけ島「由布島」目指して、8月17日、東京を出ます。

この旅の目的はただひとつ。
とにかく「やる」こと。
やってる人ってかっこいいのよ。
そしてわたしは、やってなくて、かっこわるい。
だから、やる。それだけ。

なぜ東京か。なぜ沖縄か。いったい何がしたいのか。
いっぱいいろいろ考えたけど、そんな自分がかっこわるい。
やってないのに、理屈ばっかり。

わたしに誇れるわたしでありたい。

沖縄、由布島、いってきます。